トルコ石を買った後で、そのほかの商店も見たかった。
 付近の店では外国から来た観光客が喜びそうな小さなお土産を売っていた。例えば、ガラスのランプシェードとか、スカーフ、マンドリン、ガラスのビーズでできたブレスレット、青いガラスの目玉など。
 私はそういったきれいなお土産を見たかったが、息子が私に時間をくれなかった。
 息子は言った、「母ちゃん! ボスポラス海峡の遊覧船に乗りたいの、乗りたくないの?」
 私はつい先ほどトルコ石のネックレスを買った若い店員に、聞いた。
 「エジプシャンバザールにはどうやって行けばいいですか?」
   
 道を聞くとその後すぐ、グランドバザールを後にした。
 グランドバザールは丘の上にあった。一方エジプシャンバザールは丘の下、金角湾べりにあった。
 私たちはたくさんの小規模な店が並ぶ坂道を下っていった。
 先ほどグランドバザールを探すのに手間取り、時間を使ったので、今度は注意深くエジプシャンバザールの入口を捜した。
 そして大変古い石造りの建物の入口を見つけた。
 アーチ型の入口の上には『MISIR ÇARSISI 1664』という表示を見つけた。もしもこの字がなかったら、私たちは間違いなく見つけられなかった。
 『1664』は多分この市場が開業した年代だろう。4百年の歴史がこれがエジプシャンバザールに違いないと教えてくれた。
 この名前の由来は、扱う大部分の商品がエジプトから来た香辛料だったからである。
   
 私は帰国してから友達にあげるお土産を買いたいと思った。
 私は足を止めて、店の前の石畳に置かれた商品棚に積まれたたくさんの菓子、果物の砂糖煮などを見た。どの菓子類も1キロいくらと表示されている。
 ひとつひとつ丁寧に精巧で美しく作られたお菓子の値段は、16から20リラ(800~1000円相当)だった。
 ドライフルーツやシロップにつけ込んだフルーツのような原材料は安かった。
 私は見る物を虜(とりこ)にするような食べ物を見ていて、トルコで一回食べ物に当たったので、買いたくても買う勇気がないことを残念に思った。
 これらの食べ物は、大きなトレーに盛りつけてあって、蓋をしていない。
 私は基本的には衛生的だと思うが、日本人の友達に買って行くには不衛生かもしれないと思った。
   
 それならば、買えるものは香辛料だ。スパイスも香辛料と同じように量り売りだ。
 赤い唐辛子、黄色いサフランなど。どの香辛料を買ったら良いのか分からないでいると、外国の観光客の買い物の好みを分かっている一人の店員が、いろんな種類の香辛料が小袋に包装してあるものを紹介してくれた。
 1セットが10リラで、私は何個か買った。
 店員は他の観光客はみなバラ茶を喜んで買っていきますよと教えてくれた。しかし私は花茶は買わなかった。
 というのは、自分自身が中国でたくさんの上等な茶葉を買ったのだが、帰国後当初は珍しくて味も悪くないのだが、だんだんと飲むのを忘れてしまうようになった。その理由としては、それらのお茶は飲み慣れないものだったからだ。
   
 この日、息子はすこぶる元気で、帰国してから、写真を見てみると、息子が撮った私の写真があった。私は土産を買うのに忙しく、息子が私を撮ってくれたのに気がつかなかったのだ。
 この店で、私は不思議なものを見つけた。
 大きさと形はチューリップのような食品で、一本の糸でたくさんを数珠つなぎにしてあり、天井からぶら下げてあった。
 紫、赤、黄色、何種類もの色がある。
 私はこの食品が海産物、例えばナマコ、あるいは香辛料の原料かなと思った。帰国して何ヶ月もたってから、テレビ番組を見ていると、それらの食品は農産物で、ナス、青ピーマン、赤ピーマンの芯をくり抜いて日に干したものだという。
 料理を作るときには、水で戻した後で、肉の餡(あん)や、米粒を中に詰めて、煮るのだそうだ。
 そこで私はすぐに思い出した、ペルガモンで食べたピーマンご飯のことを。あの料理の味は普通で、少し塩味とスパイスの香りがした。この詰め物料理はドルマ( Dolma )と言うそうだ。

婚礼前夜祭に新婦の着る真っ赤なドレス。グランドバザールからエジプシャンバザールに下りてゆく坂道の商店街で。

今度は地味でも見逃さなかった
エジプシャンバザールの入口。

エジプシャンバザールの外側も商店街になっている。 地元の人も大勢お買い物。

エジプシャンバザールのアーケードの中。

ケバブ(肉の薄片を串に巻き付けて焼いたもの)のお店。普通パンに挟んで食べる。「チキンは1.5リラ、ビーフは3リラだよ! 2リラ足すとアイラン(塩味のヨーグルトドリンク)がおまけだよ」

天井からぶら下がっている不思議なもの。
実はピーマン・ナスなどの中の種をくり抜いて

乾かしたもの。肉や米を詰めて料理する。

観光客にお奨めなのはバラ茶なんだけどな、買ってかないって? トルコのバラは商品作物で食品としても香水原料としても生産されている。

店員のお奨めを聞く筆者

「 いろいろのスパイスがセットになってるからお土産にはこれが良いですよ。」とエジプシャンバザールの食品店の店員は小袋が繋がった商品を勧めてくれた。

エジプシャンバザールの喧噪。午前11時。

奥さんはどのネックレスが欲しいって?

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