昨日は私たちがアジアサイドの旅行から帰って、イスタンブールを観光した第一日目(だいいちにちめ)だった。そのため、午後になってようやく外に出て観光できた。見たものは多くない。
そこで今日は、早く出発しなければならない。
今日は小雨だ。ホテルの近くにはブルーモスクと三本の記念碑の公園(ローマ競技場・ヒポドローム)がある。ブルーモスクの南にはアラスタバザールとモザイク博物館と絨毯(じゅうたん)博物館がある。
そのほか見る機会を逃してはならないのが、オスマントルコの宮殿のトプカプ宮殿だ。
私たちは午前9時に出発した。
ローマ競技場の西側を通って、ブルーモスクの西南の道にやって来た。旅行社はここからすぐだ。
私たちは旅行社と反対側の方角に50メーターぐらい歩いて、小さな商店街(バザール)にやって来た。
アラスタバザールの両側は大変にきれいなガラスのショウウインドーのトルコ土産の商店が並んでいた。従業員はみんな男の人だ。
商品はタイル、陶磁器。花模様はみんなアラビア式の装飾文様だ。デザインには人物は描かれておらず、ただ植物ばかりだ。
しかし、青を主体とした絵の中に、鮮やかな赤や緑がある。このような花模様は日本の九州の陶磁器の伊万里焼の伝統的図柄に似ている。日本の図柄はもともと中東の文化圏から伝わってきたものだ。
陶磁器商店の他には、絨毯屋、刺繍(ししゅう)のクッションや価格の比較的安い装飾品の店があった。当然日本人の喜ぶトルコ石の首飾りもあった。
私の注目したのは刺繍のクッションだ。路上に並べてある商品を見ていると、すぐに一人の中年男性がやって来た。
そこで私は、「私たちはモザイク博物館に行こうと思ってるんだけど。見たらまたここに来るからね」と言った。
店員は商店と商店の間の一カ所を指さして、「モザイク博物館!」と言った。
私はちょっとビックリした。というのは、この商店街には私たちのほかには観光客がいないし、人の目を引く表示板が何もないからだ。そこでホントかなと思いながら、商店の間を抜けて、商店街の裏手に出てみた。
そこには鉄柵に囲まれた庭園があった。庭園には樹木が植わっていて、トルコ国旗が掲げられている。
トルコ国旗がある以上、ここは国立の博物館に違いない。
私は安心した。
安心して気がついた。喉が渇いている。商店の間の路上にテーブルが置いてあったので、そこに腰掛けてコカコーラの缶を二つ買って飲んだ。
「時間がたっぷりある、ゆっくりと観光するさあ!」
コカコーラを飲み終わると、博物館の敷地に入った。
入場券は8リラだった。
ガイドブックに従ってきたものの内容については全く読んでおらず、この時はモザイクとは何を指すのか、またそれはどこにあったものなのかについて私は知らなかった。
石造りの建物の中に、地下に通ずる階段があるのを見たが、どうして地下に降りる必要があるのか分からなかった。
建物の中には回廊があって、回廊の壁にとても大きなモザイクの石板が立てかけてあった。
一枚の石板の表面には、一匹のラクダが描かれていた。ラクダの上には肥った二人の子供が跨がっている。ラクダの手綱を引いているのは、肩をはだけた白い服の、多分ローマ時代の若い男性だ。
絵を見たとき、ローマ時代の庶民の日常生活が、とてものどかで生き生きと表現されてよみがえったようだと思った。
そのあとで、私たちは階段を下っていき、古代の地表の高さまで降りた。通路から一段低くなっている発掘された地表面は千数百年前の舗装道路だった。
この道路は古代ローマ時代に建設されたもので、距離はマルマラ海の船着き場から、宮殿までだ。
路面の大理石の色は、象牙色で、それ以外にいろいろな色の石片が用いられて、モザイク画が構成されている。
緑の木の葉は特別鮮やかだ。
モザイク画の人物の皮膚の色は二種類あって、ピンク色はヨーロッパ系、茶色はアフリカ系か。