軍曹が午後の予定を説明してくれた後、レストランの若い従業員が来て何を食べるかと聞いてきた。
欧米の学生はすぐに自分の食べたいものを決められたが、私たち親子はすぐには決められなかった。
ウェイターは用意できるのは5種類の料理だと言った。
牛肉、魚、きのこ、そして2種類のチキンだという。
ところが息子は鶏肉が大好きで、その鶏肉料理がどんなものなのかを知りたがった。
私たちとウェイターの間のコミュニケーションが難航して、ガイドに助けを求めに行ったウェイターと入れちがいに、ガイドがやって来てどうしたのかたずねた。
話を聞くと、ウェイターを呼んだ。
少しすると、ウェイターがまだグリルにかけていない5種類の料理の鉄の皿を私たちの目の前に置いた。
鶏肉のひとつは串に刺した焼き鳥で、もう1種類は鶏肉の入った焼きめしだった。
息子は5品を一目見るなり、すぐに鶏の串焼きがいいと言った。
私は魚にした。
ガイドは私たちに代わって厨房にオーダーしに行った。
皆がパンを食べ、豆のスープを飲んでいると、それまで注意を払っていなかったのだが、一組のカップル(?) 黒髪の中東産油国の若い男性と欧米の金髪の女性が遅れてやって来てテーブルに着いた。
(彼女の髪の色はホントの所、金髪ではないのだが、このあと私は彼女のことをブロンド美人と呼ぶことにする。)
彼らは料理をオーダーした。
女性はすぐに、「Fish! ( 魚 )」と言った。
ブロンド美人はまるで彼らが遅れたことを言い訳するかのように言った。「あなた方は、通ってきた道の脇にあった岩窟教会に行ってみたかしら? 見たの? 私たちは礼拝堂を見てきたのよ」
このカップルは二人で絶壁の表面にある洞窟に行ってきたのだ。
私は来る途中に礼拝堂があるという看板があったのを思い出した。
私が隊列と距離が開いてしまって、その道しるべの所まで来たとき、私は他の人たちがここを曲がって、教会に行ったのか、それともまっすぐに行ってしまったのかわからなかった。
私は直進する方を選んだのだ。
ブロンド美人は、教会は美しかったわよと言った。彼女ら二人は礼拝堂の中でどんな時間を過ごしたのかな?
彼女は言った。「私、日本に行ったことがある!」
そこで、私は聞いてみた。「日本には観光で行ったの?」
「いいえ、私は東京に歌をうたいに行ったのよ」
それなら彼女は歌手なの?
彼女が私にどこから来たんだと聞くので、「Nagoya (名古屋)」と答えた。「トルコはすごく長い歴史があるから見るべき名所旧跡がたくさんあるけれど、わたしのホームカントリーはこんなに長い歴史がない。
私の故郷は歴史上重要なところなのよ。4百年前には武士の間で抗争(?)があって、名古屋というのは日本でも有名な三人の武士の出身地なのよ。
TOKUGAWA(徳川)って知ってる?」
同じテーブルではあるが、私からやや離れたところに座っていた一人のアメリカ人の男性が言った。「僕は知っています。」
彼は日本に対して興味があるように見受けられた。
私は日本の武士の紹介をしたとしても、分からないだろうなと心中思ったが、話してみた。
「Tokugawa Ieyasu 、Oda Nobunaga、and Toyotomi Hideyosi (徳川家康、織田信長、豊臣秀吉)・・・・・」
しかし、ブロンド美人は私の紹介を聞くと、朗らかな笑い声をたてた。