ミニバスは速いスピードで乾燥した草原を走っていく。
トラクターとすれ違い、馬車を追い越していく。
周囲は収穫を終えた農地なのだろう、あたりの空気にウンコのような臭いをまき散らしている一帯を通り過ぎた。
地下都市から30キロも離れたあたりは平坦な岩石の大地だ。
ミニバスは他に走る車もなく、障害物もない道路を猛スピードで駆けていく。
車に乗っていた時間はやや短くて20分かそこらだったろう。
車外には、岩も丘陵もなく、ミニバスはまるで白い砂漠の中を走っているようだった。
突然、大地に一筋の亀裂が走っているのを見つけた。
私たちは対岸の黒い絶壁を見ることができた。
平原の白色と岸壁の黒色は奇妙なコントラストを作っている。
見る間に対岸が近づいてきた。
ミニバスは一筋の渓谷に沿って走っていて、走行中は崖そのものは見ることができなかった。
その両岸には転落防止の防護柵もなく、照明灯もなかった。もしもドライバーがこの渓谷の存在を知らなければ、車が転落する危険がある。
渓谷は14キロメートルの長さで、高度差は80メートルある。
ミニバスはぐるりと回って渓谷の最も上流の地点にやって来た。
その後、対岸のほとりに達した。バスは坂道を下っていき、坂道に停車した。
私たちが下車したところは絶壁の途中で、崖には欄干のある歩道が付いていた。谷底に生えている樹木は高く、私たちの立っている高いところから谷底の梢が見えた。
下っているとき、私は偶然にガイドの妹のそばを歩いた。
彼女はショートパンツとTシャツ姿で、小さなスカーフで頭を巻いていた。
そこで私は英語で彼女に聞いた。
「Do you have a lot of homework of summervacation ?
(夏休みの宿題は多いの?) 」
しかし、彼女には私の話がわからなかった。
ガイドは妹は中学生だと紹介していた。
〈 home work 〉とか 〈summer vacation 〉などは普通の単語だ。
そこで私はもう一回話したが、彼女はもともと英語は知らないようだった。そこで私たちの会話は終わってしまった。
下りていく途中で、岸壁にうがたれた洞窟教会を紹介してくれた。
ここIhlara(ウフララ)渓谷の断崖の表面にキリスト教徒たちが数百の教会や住居を建てたのだ。
現在でも30以上もの洞窟の中には鮮明に宗教壁画が残っている。