私の質問〈トイレはどこですか?〉に対しての運転手の反応は私を困惑させた。だから私はバスの周囲に沿って公園の景色を見て歩いた。
しかし、空はだんだん暗くなる。私は不安になった。
私はもう一回、運転手に聞いた。こんどは誰も笑わなかった。多分、もうすぐ出発するからだろう。
とうとう中年の運転手が人差し指で私に方向を教えた。
彼の指は海岸道路を西に向かって歩いて行く2、3人の観光客を指し示していた。
私は息子といっしょに彼らの後を追った。
その後、バスから百メートルぐらい離れたところにガソリンスタンドがあると分かった。
ガソリンスタンドの建物の地下にトイレがあった。
建物の内部は商店になっていた。
そこで私はミネラルウォーター2本と、ドロップ、チョコレートを買った。
私たちがゆっくりとバスの所に帰った後でひとりの運転手が私たちのスーツケースを大型バスの荷物入れに入れ始めた。
私たちは勝手にバスに乗り込んだ。
乗車券に書かれている番号を探したが、座席の上の手荷物入れには何の表示もない。私たちは自由に席を選んで座った。
一人のヨーロッパ人が私に尋ねた。「あなたは自分の番号をみつけたの?」
私は、「この番号は意味が無いよ」と言った。
そこで彼らも好きなところに座った。
しかし、出発前に乗務員が我々のところにやって来て、旅客人数などを確認した。
乗務員が言った。「あなたは自分の席に座って下さい」
私は、「I can't find number anywhere. (どこにも番号がないんです)」と言った。
すると、ヨーロッパ人の男性が私の様子を見て、番号の場所を教えてくれた。
私には思いもよらなかったが、番号は座席の肘掛けの上にあった。
私たちはすぐに移動しなければならなかった。
息子は、「お母さん、あの人たちに間違えたって言って、謝らなけりゃ駄目だよ」
バスの中にはたくさんの空席があったが、バスは発車した。
バスはマルマラ海の海岸を東に向かって走りガラタ橋にやってきた。
付近の船舶の明かりはきれいだった。
バスが動き出すと息子はたちまち顔を座席の前の折りたたみテーブルにうつぶせていた。
あたりはすでに真っ暗で、バスは交通渋滞のガラタ橋を通過する。
今は帰宅時間でいつも渋滞するらしい。
バスはゆっくりと新市街地の海岸道路を走った。
この道は私たちが今日の午後、路面電車で通ったところだ。右側はボスポラス海峡の海岸で、左側の高層マンションはお金持ちの住む丘陵地帯だ。
30分ぐらい走ったところでバスはだんだん坂を登っていく。
とうとう、バスは吊り橋の上に到達した。
吊り橋の高度は海抜60メートルぐらいである。
橋の下のボスポラス海峡を行く船舶の明かりが宝石を散りばめたように美しい。
私は息子を起こして景色を見せてやりたくて言った。
「見てごらんよ! 外をしっかり見て!」
だが息子は元々、窓の外の夜景を見る気がない。本当に残念だ!
こんな有様で私たちは201*年7月28日の夜、欧州サイドのトルコからアジアサイドのトルコへと海を渡ったのである。
私たちのトルコ旅行は本当の意味で始まるのだ!!!