私と息子の乗ったタクシーは軍事博物館に着いた。
博物館の大きな門は閉じられていた。
守衛所に入ると、守衛所の中には空港と同じようなX線手荷物検査機があった。
守衛所を通り抜けて博物館の庭に出た。
庭にはたくさんの樹木や灌木があった。博物館の入り口の階段のそばには、あじさいが植わっていた。トルコのあじさいの花は7月下旬でもまだ咲いている。
博物館に入館するとまた次のX線検査機があった。
検査を済ませると今度は入場券を買わなければならない。
私はもう疲れてしまっていて、面倒くさかった。
券売所は窓口があるのではなくホテルのフロントのようなカウンターだ。白い半袖のカッターシャツを来た男性と女性がカウンターの奥に立っていた。
私は息子の高校の学生証を見せて、安い学生料金の入場券を買った。
女性職員は、入場券の他に撮影券は要りますかと聞いた。
そこで撮影券も買った。
そのあと彼女は、私のリュックサックをフロントにおいて行って下さいと言った。
しかし、私はリュックサックを預けたくなかった。
というのはリュックサックの中のペットボトルの水を飲みたかったからである。その他にも上着などを出したかったのだ。
そこで私はフロントに預けないよと言った。
彼女は、入館する人はみんな預けなければならないんですと言った。
私は、今は入らないからと言った。
そして、入り口に戻ってリュックサックを床に置いた。
そのとき私が何をしたいか分からず、息子が珍しく命令口調で言った。
「どうして入らないのさ!? 僕たちは荷物をフロントに預けなきゃいけないんだよ、係の人の言うことに従わなきゃ駄目だよ!」
息子の一言が私の癇(かん)に障った、あそこでは英語を話し、ここでは日本語を話さねばならない、ほんとにやっかいだ。息子には私の気持ちが分からない。
「私は水が飲みたいの! いったん博物館に入ったら飲むことができないでしょ? 会場は冷房がきついかもしれないから、着る物も要るの!」
私の声は大きくなり、険悪な調子だった。
博物館の男性職員がすぐに私のところに飛んできて言った。
「博物館の中にも休憩所がありますから。」
私はペットボトルを出して、ひと口水を飲んだ。
すぐに心中、格好悪いなと思った。
そのあとで私たちはリュックサックをフロントに預けたのである。
フロントの前を通りすぎて博物館のロビーに歩いて行った。
ロビーにはソファーとテーブルがあった。
しかし、飲み物の自販機は見あたらなかった。