レストランで支払いをするとき、ユーロを使った。
若い女の店員はトルコリラでお釣りをくれた。
午後は、新市街を観光するつもりだった。私たちのホテルは旧市街(世界歴史遺産地区)にあった。
両地区は金角湾(Golden Horn)を挟んでいる。
新市街に行くにはどうやってこの大きな川のように見える海を渡るかを決めなければならない。
両岸の間には何本かの橋が架かっている。
最も有名なのがガラタ橋(Galata)だ。
この橋はボスポラス(Bosphorus)海峡、マルマラ(Marmara)海、金角湾の三つの海の交わったところにある。
最近、イスタンブールを取材したどのテレビ番組も必ずと言っていいほど、ガラタ橋を放映している。
橋の上には釣り人が多く、また橋の上からは両岸の美しい歴史的建造物が眺められるからである。(特にイスラム教寺院)
海峡を渡るにはいくつかの方法がある。まず第一に電車、第二に船、第三としては歩いて橋を渡る。
私たちが昼ご飯を食べたレストランから路面電車のGülhane駅は目と鼻の先だ。だから、電車に乗って新市街地に行くのが便利だ。
道路の中央の路面電車の駅には自動改札機があるが、駅員はいない。
私たちはプラスチック製の乗車券JETON(TOKEN)を買う必要があった。しかし、自動販売機が見つからなかったのでJETONを売っている商店を探そうと思った。
ようやく一軒の旅行社を見つけた。
入り口にはトルコ男性がひとり立っていて、私たちのためにドアを開けてくれた。
旅行社に入ると、パソコンの前に座っている若い女性を見つけた。
私は彼女が日本人かもしれないと思った。
しかし、私は英語で彼女にJETONは在りますかとたずねた。
立ち上がって私たちのところに来ようとしていた彼女は、私たちに向かって「NO!」と言うなり席に戻った。
彼女はとても疲れているように見えた。
もしも、私が日本語で話していたら、どこでJETONを買うことができるか教えてくれていただろうか?
先ほどのトルコ人男性は愛想のよい笑顔で私たちのためにドアを再び開けてくれた。
旅行社を出ると、歩道の上をあちこち歩き回った。
駅に戻ってくると、再びきょろきょろと券売機を探し始めた。
するとあるトルコ人男性が私たちが困っているのに気づいて、どこに券売機があるのか教えてくれた。
駅からたかだか7メートルほどの歩道上に日本の郵便ポストと同じ格好の三つの券売機があった。
私たちには予想の着かない形だった。
息子は紙幣を入り口に差し込んだが、いったいどのボタンを押して良いのか分からない。
機械には二つのボタンがあった。
男の人が息子の代わりにひとつのボタンを押してくれた。そうして、私たちは3個のJETONを買うことができた。券売機の上には何枚買うかの数量表示が見あたらない。
JETONを使って私たちはホームに入ることができた。
私はガイドブックを読んでいる息子にどの電車に乗るのかと聞いた。
息子は答えた。
「関係ないよ! どの電車でもいいんだ」
私は思った。
「息子の言うのも正しい。私たちには充分時間があるし、行くつもりのないところに着いたとしても、戻る時間もあるし、他の方法だってある」