私たちはアヤソフィア大聖堂を見たあとで聖堂の木陰の下で休んだ。
私は地べたにビニールシートを広げた。
トルコの普通の人が日本人のようにピクニックに行ったとき、地べたに座るのかどうか知らなかったので、警備員が来て怒られるんじゃないかと心配だった。
庭には考古学的な意味をもつ発掘された大理石の建材が並べられていた。
私たちは休みながら周りの様子を観察した。
あたりには欧州から来た十数人規模の観光グループがいて、ガイドを取り囲んでガイドの話を聞いている。
みんなショートパンツ、Tシャツ、タンクトップを着ている。特に女の人は白いショートパンツがお好きのようだ。
そこに中年のトルコ人清掃員が地面を掃きながら私たちのほうに近づいてきた。ちらりと私たちを見たが、それ以上関心はないようで、掃き掃除を続けた。
息子をそこに一人で休ませておいて、もう一度大聖堂の中を見に入った。
息子のところに戻り、私たちはアヤソフィア大聖堂を離れ電車通りでカフェテリアを探した。
昨日考古学博物館に行くときに見つけたこの店は歩道に面してガラス窓があり、入り口から向かって左側にはたくさんのトルコ料理のバケット、右側には様々な種類のお菓子やケーキがならんでいる。レストランとカフェの両方を営業している。
私たちが店に入ると、50そこそこの男性と女性、15才ぐらいの男の子、20才(はたち)ぐらいの女の子がいた。
家族経営のレストランのようだ。
若い男の子はたぶん彼らの息子で、夏休みの間自分のうちの店を手伝っているのだろう。
この後、たくさんの場所で中高生の男の子たちがアルバイトをしているのを見かけることになる。商店、ホテル、旅行社などである。
店の人は今準備中で、12時から営業すると言った。私たちは外で15分待つことにした。
そこでレストランの近くのみやげ物屋の店先の歩道に立って、店の外に並べてある商品を見た。
歩道は非常に狭くて、ひと二人がやっとの事で通り抜けられる。
とくに恐ろしいのは路面電車(トラム)がガタンゴトンと突然の轟音を響かせて我々の身辺に迫ってくることだ。
歩道がまるで電車のホームのようで、車両がもうちょっとのところで歩道の縁石を擦りそうなのだ。
電車が通るとき、私たちは大慌てで商店のわきにすっ飛んで逃げなくてはならない。
もしも耳が不自由だったら、電車の接近に気がつかず、どんなことになったか分からない。