5時になった。午後5時の日差しは強烈だ。
息子はホテルに帰ろうよと言う。
私は「ホテルで食べるものを買っていかなきゃ」と言った。
と、息子は「お昼を食べたところでまた食べようぜ!」と言う。
私はびっくりした。
というのは私たちが食べた牛肉・羊・鶏肉のグリルは日本円で2500円もしたのだ。
私は反対して言った。
「あなたは何を言っているの? ダメダメ!」
最初に2個のごまパンを買った。商売人は薄い色の紙でひとつひとつ包んでポリ袋に入れた。値段は本当に安くて2リラだった。1リラは日本円にして50円に相当する。
そのほか、私はトウモロコシの屋台の店主に2本くれとたのんだ。彼は一本一本紙で包装した。
私はパンの袋を広げて、トウモロコシを中に入れさせた。
私は赤い色の屋台のそばに立っていた。
トウモロコシを焼くバーナーは耐えがたく熱く、日差しも強烈だ。トウモロコシを焼く店主はさぞや、きつかろう。売り子のだれも帽子をかぶっていない。
価格も非常に安い。1本1リラだ。
私は息子に言った。「ホテルでこれを食べて、休んだ方がいい」
実際のところ私は焼きトウモロコシが大好きだ。日本の神社の祭日には、あたりにお醤油が焦げた焼きトウモロコシのいい香りがする。
ホテルに着くと、すぐにトウモロコシにむしゃぶりついた。だがすぐにそのトウモロコシは塩味がないのに気がついた。
私は飛行機の機内食に付いてきた塩を使った。
トウモロコシの表面には焦げた様子もない。
一粒一粒がめちゃくちゃ固い。嚼もうにもかみ切れない。もうちょっとで、私の歯は欠けてしまいそうになった。
このトウモロコシはとうとう、翌日ゴミ箱行きになった。
トルコ人があんなに固い食べ物を食べられるとは信じられない。
ひとつの可能性としては、あれは熟しすぎていて焼きトウモロコシには適さない物だったかもしれない。
もしも、粉に挽いてトウモロコシパンを焼いていれば柔らかくておいしかっただろうに。焼きたてなら熱々で食べられたのかも。
それともあんなに暑い屋台で長時間おかれているうちに、だんだん固くなってしまったか。どんな原因か私たちには分からない。
ごまパンも乾いてしまって固すぎた。
しかし、口の中で一生懸命嚼んでいると。だんだんおいしくなってくる。乾燥した空気が影響している。
息子は「このパンはホントにおいしいよ」と言った。
食料品店のケースのなかのパンは屋台で売っている物よりおいしいにちがいない。
トルコは中東の乾いた気候の国なのだから。