ホテルは旅行社から近い。地図の上では3百メートルほどだ。
旅行社はメールで私たちが日本にいるとき、到着後に社長さんが9時半から11時の間に長距離バスのキップと国内航空券を持ってホテルに来てくれると知らせてきていた。
しかし、私にとっては「時は金なり」。時間を無駄にはできない。
私たちは出発した。ホテルを出るときにフロントに、これから旅行社に行くつもりだが会えない場合には社長さんがホテルの方に来るかもしれないので9時半までにはもどる、と説明しておいた。
地図の上ではホテルは旅行社に近い。ところが右に曲がらなくてはいけないのにどこで曲がるか分からない。十字路はあるにはあったが、細くて近すぎる。もしも右に曲がっていたらすぐ着いただろうがこれでは近すぎると思ったので、わざわざ遠くの公園まで来てしまった。
道に迷った。誰かつかまえて道を聞こうと思った。
歩いている人はみな仕事に行く人だ。忙しい様子だ。
ひとりの若い女の人が足を止めて携帯で話し始めた。そこでその人に近づいて声をかけたが彼女は一言も発せずに歩いて行ってしまった。
私と息子は公園の周辺の路上に立ち止まった。そのとき、近くのビルの日陰になった石畳の上に数匹の子猫を見つけた。
子猫たちはゆっくりと歩いている人をめざとく見つけては、顔を見上げて、かわいい声音で鳴いている。
私はびっくりした。子猫たちがかわいらしいので写真を撮った。しかし、子猫たちと一緒に遊んでいる時間はない。地図によると旅行社はイスラム教寺院(ブルーモスク)のそばにあるはずだ。私たちは意外な方向に非常に高いモスクを見つけ、なんとか旅行社にたどり着いた。
社長が言うには、ホテルに電話してみたら従業員が私たちの計画を教えてくれたので待っていた、とのこと。
イスタンブールの世界遺産地区の樹木は大変大きいので、目印となる有名な公園の3本の記念碑(モニュメント)を見つけることができなかったのだ。私には思いもよらない失敗だった。
その後、ホテルに帰ってから私はデジタルカメラに写したあのかわいらしい子猫たちを見た。
驚いたことに、彼らの目つきはとても鋭い。非常に飢えて、かつ大変喉も渇いていたのだろう。子猫たちはそこで、観光客が食べ物をくれるのを待っていたのだ。
イスタンブール歴史地区の中心部には有名な歴史的建造物が並んでいて、北から南にオスマントルコの宮殿(トプカプ宮殿)、アヤソフィア大聖堂、ブルーモスク(Blue Mosque )(スルタンアフメット・イスラム教寺院)。
アヤソフィア大聖堂のまえには大きな噴水のある公園があり、そのほかブルーモスクの西側には3本の記念碑(正確には2本のオベリスクと1本の青銅柱)のある細長くて幅の広い公園がある。
───(ローマ競技場・ヒポドローム【At Meydanı 】)
旅行社が用意してくれたホテルは、徒歩でこれらの史跡に行ける歴史地区内にあった。