搭乗前の私たち日本人のグループの前を、小さな機のはずなのに、なんであんなにいるのかと思うほど10人以上もいようか、私たちの搭乗機のクルーメンバーが行列を作って通り過ぎていった。
 機長、副機長、男性クルーは格好いい金銀モールが肩に着いた黒っぽい制服姿。
 それに続くキャビンアテンダントの女性たちも同じ制服姿。ただしズボンではなく、タイトスカートだ。
 真夜中だった。
 しかし、機長を初めとして最後尾のメンバーにいたるまで、私たちにニコニコと笑いかけながら、衆人注視の中を行くかのように少し照れながら、オモチャの兵隊さんの行進宜しく元気よく通り過ぎていった。
 帰国していく観光客を笑みで送ってくれるのは、チップのせいではなかった。そういうお国柄なのだ。
 こんなに歓待してくれるなんて!
   
 そして私が今思い出したのは1987年に中国に旅行に行ったときのことだ。
 中国を離れるとき上海空港を機が離陸する直前、私は日航機の窓から滑走路に立っている豆粒のように小さな警備員たちに気づいた。
 彼らは皆私たちに向かって敬礼して日本の観光客に友好的なホスピタリティーを表現してくれた。
 あのとき私は中国に観光に来て良かったなあと思ったものだ。
 今は空港の様子はどんなになっているのだろうか。
 私にはわからないが。
   
 機は上昇した。
 窓から見えるイスタンブールの街の明かりが小さくなっていく。
 その灯火は青っぽい白や黄色など当たり前の色だけでなく、緑、紫、ピンクと様々だ。
 トルコ人は日本人と違って、明かりに対しても美しく個性的なものを欲するらしい。夜景を通して文化の違いを教えられたような気がした。
 日本の大都会ほどの光の洪水はなく、そのパラパラと散乱した灯火はまさに黒いベルベットに宝石をちりばめたようだ。
 トルコ人は飾ることに一生懸命になって隅々まで飾ろうとするように思えた。
   
 真夜中だったが、すぐに機内食の晩ご飯がでた。
 例によって僕は寝るから食べないぞと言っていた息子も、スチュワーデスの案内でチキンがあると知ると、喜んでチキンのメニューを選んだ。
   
 トルコの旅行はビックリどきどきすることも多かったし、格好悪いこともしでかした。
 しかし、面白かった。
 私は前にも増してだんだんトルコが好きになってきていた。
   
 息子は言った。
 「やっと、ぼくらは日本に帰るんだね! 家に帰りてー!」
   
      哲平と私のトルコ旅行の
      お話、これにてお終い。
   

 The End     

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