土産物を買うと、私はバザールのアーケードの通りの遠くの方を見てみた。グランドバザールほど長くはない。売っている物のほとんどは食品だ。
 この市場の雰囲気は日本の小都市の伝統的市場と似ていると思った。
 私たちは足を止めると、ちょうど目の前には、小さな食べ物スタンドがあった。二人の中年の男性従業員が白いコックの帽子をかぶって、白い服を着ていた。
 調理台の上には一本の串刺しが立ててある。
 串の高さは1メートル、直径は30センチもある。この肉の串刺し(もしも正確に表現するとしたら、巨大な肉柱とでも言おうか)を、そばの炉でクルクル回転させながら焼くのだ。
 一人のコックがナイフで火にあぶり終えた肉の柱の表面をこそげ落として薄い肉片を作っている。
 このあぶり肉がDöner Kebabı (ドネルケバブ)と呼ばれる物だ。
 ドネルはクルクル回るという意味で、Kebabıの意味はグリルにした肉という意味だ。
 街の小さな食べ物屋が売っているのは、この肉をパンに挟んだ物だ。聞くところによると、この肉の挟んだパンはとても美味しいという。香辛料のきいた炙(あぶ)り肉が挟んであるからだ。
 二人の従業員は私たちが、彼らの店の前に立っているので、食べたいですかと聞いてきた。
 私は息子に食べたいかと聞いたが、息子は返事をしない。
 二人の従業員の顔に、がっかりしたという表情が表れた。
   
 この時、バザールの中はあまり混雑していなかった。それに昼ご飯の時間にはまだ間が空いている。だから息子はお腹が空いていなかったのだろう。
 今日は私たちがトルコ観光できる最後の日だと言うので、気持ちは焦っていた。ゆっくりと観光している時間はない。
 でも私はドネルケバブの価格の看板の写真を撮った。
 ここで紹介するとすると、チキンケバブは1.5リラ、ミート(羊あるいは牛)ケバブは3.00リラ。あと0.5リラを足せば飲み物が一杯おまけに付いてくる。
 この日の観光の時間配分を今思い出してみると、この時ここでケバブを食べたら一番良かったのだが、私たちはこの機会を逃してしまったのだ。
   
 私たちはバザールを大急ぎで後にして、海の方へと歩いて行く。
 と、すぐに巨大な寺院の礼拝堂の広場にたどり着いた。
 礼拝堂の周囲の回廊の外壁には、たくさんの水道の蛇口が付いていた。蛇口の一つ一つに対応するように立方体の石の椅子が配置されている。
 何人かの男の人が石の椅子に腰掛けて、顔を洗い、口を漱ぐだけではなく、手で自分の足を洗っていた。
 洗ってから彼らはまた靴を穿いて寺院に入っていくのだろうか? 蛇口から礼拝堂の入口まで10メーターは離れているが。
 あいにくその男性信徒が寺院に入っていくところを見ている暇がなかった。
 この寺院の広場には外回りを囲う塀がなかった。
   
 寺院の手洗い場から20メートルばかり離れると、そこにはテントの店が幾張りかあり、食品を売っていた。大変な人混みの広場を通りぬけていくと、金角湾に着いた。
 目の前の船着き場には、何隻もの遊覧船や、数百メートルほど離れた所には、渡し船の船着き場があった。(イスタンブール域内のヨーロッパサイドとアジアサイドを行き来する日常生活の交通手段)
 車道には自動車が多くて、道を渡るのは難しいと思った。
 こんなに太陽がぎらぎら照りつける真っ昼間、人も車もいったいどこからやって来たのだろうか?
 路上は当地のトルコの人で一杯だ。どうも家族連れや、ビジネスマンのようだ。群衆の中から外国の旅行客を区別するのは難しい。
 こんなたくさんの人が船に乗るのを待っているのだろうか。
 この時、息子が言った、「どうもあそこに道路の向こうに出る地下道があるみたいだよ!」
 息子の推理は正確だった。
 私たちは地下の商店街を通って、船着き場に出た。
 私たちは遊覧船のチケットを予約していない。旅行社の社長がチケットを買ったらと勧めてくれたが、買った場合に時間の制約を受けるのが嫌だった。それで今になって、どの船に乗れば良いか分からなかった。チケットはどこで売っているのだろうか?
 しかし、私の心配は瞬時に霧散した。というのは、この時、船会社の従業員が抑揚をつけて客集めをしているのが聞こえてきたからだ。

お昼の礼拝の準備で手足を洗う男の人たち。バザールのすぐ港側に隣接するイェニ・ジャーミーの洗い場。

洗い場遠景

ジャーミーのドーム

ジャーミーを抜けるアーチ。

イェニ・ジャーミー界隈。

ジャーミーの港側

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