山腹には何カ所か平坦な場所があって、どれも古代の建物の遺跡だった。十何本かの白い円柱がある所があった。たぶん古代の神殿か、集会所の跡だろう。
 私たちが歩いているところより下の山の中腹に、古代の劇場が見えた。その劇場は昨日見たヒエラポリスの劇場よりももっと急峻で、上段25段ぐらい、中段35段ぐらい、下段25段ぐらいの階段がある。(全体できっかり80段の階段席がある)ペルガモンの丘の下まで下りる途中の部分で、一万人を超える収容人数の巨大劇場である。
 ガイドはこの劇場に連れて行かずに、劇場よりも北にある建物に連れて行った。
 ローマ時代にこの地方の官僚はローマ皇帝を祭る神殿を建てたいと思ったが、必要な地面が確保できない。
 そこでギリシア時代の建物を取り壊した。建設用地を拡張するために崖の縁にアーチを築いた。その基礎の上には6本、9列のコリント式の円柱を持つ神殿が建てられていた。
 現在では発掘された円柱の一部が修復再建されて立っている。
 武器庫以外で、元々の建物が建っている場所としては、もっとも高い場所にある。大理石の柱と、大きな梁(はり)が夏の太陽の下でまばゆく輝いている。
   
 ガイドは私たちに10分の自由時間をくれた。ほとんどの人は神殿の写真を撮った後、神殿のそばの崖の上から、丘陵の西側の農村やもっと遠くの景色を眺めていた。そこからは劇場の下の平坦な場所に、何か建物の遺跡があるのが見晴らせる。
 今日傘を差してきたのは、私と息子だが、ガイドも持ってきていた。息子はガイドが傘を差しているのを見たと私に知らせた。
 次ぎにガイドは、私たちを神殿の地下の回廊に連れて行った。辺りにはいくつかの部屋がある。今では天井はない。
 積み上げられた石の壁の隙間から野の草や、蔓が生えている。
 廊下を通り抜けて、地上に出て、とうとう私たちはペルガモン王国の階段式劇場に向かった。劇場の一番高い場所には建造物が一つあり、それはビザンチン時代に建造された入場口だった。
 もしも劇場に行きたいなら、この建物のそばの廊下を通り抜けなければならない。通路はあまりに狭く、一列になってようやく入っていくことができた。
 私たちは階段席に着いた。
 私はガイドが観光客に解説をしているところの写真を撮った。ガイドが自由時間をくれたので、私と息子は互いに劇場に座っている写真を撮りあった。
 私たちのグループの若い男の人が階段を猛烈なスピードで駆け下りながら(大変に危険だ)、奇っ怪な声をあげた、「Shuwa Shuwa Shuwa ! 」  たぶんこれは彼の脳裏にあるスーパーマンが疾走するときの表現なのだろう。
   
 私たちはこんなふうに自由気ままに劇場の参観を楽しんだ。
 この時私はガヤガヤと人の声が近づいてくるのに気がついた。
 上の入口を通って、10人以上の黒い僧服を着たカソリックの修道女たちが、劇場に下りて来た。
 一人の尼さんが階段の下の方に下りて立ち止まり、私たちに向かって歌を歌い始めた。私は面白いと思って、彼女が歌うのを30秒かそこら聞いていた。
 修道女たちが来る前に、ガイドは次に見に行くのは病院〈Hospital〉だと言っていた。私は時間を無駄にはできない、グループと一緒に行動しなければと思ったのだが、修道女は大勢だ。
 彼女たちが外に出る廊下に立ち塞がっている。この何分かが私たちに予想もしないことをもたらした。
   
 通路を通って平坦地に戻ったが、不思議なことに誰もいない。誰もいない原っぱだというのに、私たちのグループが見つからないのだ。ガイドは階段を上がったのではないのか? 
 ならば階段を下りて、別のルートを行ったのだろうか?
 そこで、もう一度、狭い廊下を通って劇場の階段席に出た。ところが劇場には修道女以外には誰もいない。
 それでまた上の平坦地に上がった。
 私たち二人はガイドとはぐれてしまったのだ。見渡す限り、彼らの姿は見あたらない。
 私たちはどこに行けばいいの?
 私が自由気ままに写真を撮ったりしているから、彼らの動きを見逃してしまって、とうとうこんな事になってしまった!

ペルガモン王国のEumensⅡ(197-159 BC)の頃作られた。一万席より多くはないが、最も急峻な物のひとつと言われている。座席は80段。上中下の三つの部分に分かれており通路ごとに観客の入場口が設けられていた。貴賓席は中央部下段にあった。

ビザンチンタワー? 
劇場への降り口はこの建物の際にある

ペルガモンの急峻な劇場を歩いてみたが、恐ろしくて手をついてしまう。

階段席に座ってガイドの説明を聞く。ギリシア時代は歌劇がえんぜられた。歌うのは男だけで、女役は口に穴の空いたマスクで偽装した。泣いたり笑ったり感情は素早く別のマスクにかぶり直す。陽気な性格は明るい色のマスク。暗い性格は暗い色で表現したという。

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