私たちは二つスーツケースを持っていた。一つは青色の中型のスーツケースで、もう一つはピンクの小型だった。
 ピンク色のは特別小さくて、中には食べ物や薬、冷房がきつかったときに羽織る衣類などが入っていた。その他の使用目的としては、夜行バスで寝ているときに、足乗せ台にすることだ。
 しかし、私たちが夜行バスに乗るときに、トルコ人の女性従業員が、スーツケースを荷物置き場に入れるように要求した。それで、ピンク色のスーツケースを車内に持ち込むことができなかった。
   
 乗車してみると、私たちの予約席の29号と30号の座席にはすでに欧米人の女性が一人座っていた。
 そこで、女性従業員は私たちを入り口の隣のとても狭い座席に座らせた。目の前は入り口の階段だった。こんなスペースでは手足を伸ばして寝ることができない。
 私は恨めしくて私たちの席に座っている女性をちらりと見た。
 外はまだ明るく、バスの中は混雑していた。バスが二回、三回と停車するたびに、二人三人と乗客が降りていく。
   
 突然、女性乗務員が私たちの所へ来て、予約していた座席が空いたので移動してくれと言った。
 私たちが移動してホッとすると、私たちが先ほどまで座っていた席に、今は女性乗務員と中年の男性乗務員が座っている。
 彼らの顔にも安堵の色が浮かんでいた。乗務員だって自分の座席が必要だ。
 たぶん夜の11時か12時頃、バスは目的地の一つに着いた。このサービスステイションを見て、私は愉快になった。
 というのは、明かりはコウコウ(煌煌)、幾つかの建物の形状は、旧約聖書の中のバベルの塔や北京天壇公園の紀年殿そっくりなのである。
 建物の形に沿って、白や黄色の電光が輝いて、ディズニーランドのようにきれいだった。
 私たちはトイレに行った後で、店の外をぶらついた。
 入り口には小さな屋台があったが、人目をひくのはピザパイの店だ。
 コックは客の目の前で、生地を打ち、傍らの炉でピザパイを焼いた。あたりには香ばしい香りが満ちており、イスラム文化に特徴的なリズムの音楽が流れている。
 息子にピザパイを買うかと聞いたが、食べたくないと言って、息子は一人でバスに帰って行った。
   
 私一人で店の中に入るとカフェ、ファストフード、コンビニがあった。
 私は箱に包装された菓子を見つけた。価格は6リラぐらいでたいへん安い。品質も良さそうだが、旅行中だというのは、ものを買うには、タイミングが悪い。
 私は2本のミネラルウォーターと3リラでプレツェル(PLETZEL)(もともとドイツ発祥の塩味の焼き菓子)の袋を買った。
 車に戻ると息子に買ってきたものを見せたが、息子は食べたくないという。そのプレツェルは幼児用なのかとてもミニサイズで可愛らしく、いろいろな形の物が入っていた。
 私が塩っ辛いものは美味しいわ美味しいわと言って喜んで食べていると、息子は、「食べ過ぎるなよ、腹に良くないぜ」と言うのである。
   
 バスは動き出した。バスに乗っていた大部分の欧米人は降りてしまった。今乗っている乗客の大部分はトルコ人の男性だ。
 前の席に座っているトルコ人の男性はシャワーを浴びていないらしく、濃厚な腋臭がした。
 今日、日中仕事でもしたのだろうか。
 私は逃げ出すこともできないのだ。実際の話、私だって腋臭はある。しかし、アジア人は特に腋臭を嫌う。というのはアジア人の大多数が腋臭のにおうDNAを持っていないからだ。
 このような臭いには慣れているが、明日の朝まで我慢しなければならないとは、本当に大変だ!
 今晩は足を載っけるピンク色のスーツケースがないのだ。私一人が、日本から持ってきた四角いプラスチックの洗面器を台にしていた。
 私と息子はだれが使うのかと争ったが、私が強硬に要求したので、息子はだまって私の好きにさせてくれたのだが、こういうことは、珍しい。
 今になってわかったが、あの晩は息子は食欲もなく、私と言い争う元気もなかったのだ。

パムッカレに向かうトイレ休憩地点。レストラン、コンビニ、ファストフード店、何でもござれ。

六リラのロックムの箱入り。
タピオカのペースト味のヘルワ。

同じく安価な箱入り菓子。

床の上に置いてあるのがプラスチックの枝付き 大ビーカー。用足し後にお尻に水をかけて清潔にする。

和式便器に似た形だが周りの汚れの跳ねが
掃除しやすい。

バビロンの塔のようなイルミネーション。

サービスエリアの入口。

サービスエリアのマーケット。

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