私と息子は熱いお茶を飲んだ。
 私は事務室に日本女性がいるのを知っていたけれども、外国に来て、もしも日本人を見かけたとして、私たちにとっては珍しいことであっても、彼女にとっては仕事関係で日本人を見かけるのは毎日毎日のことだろうから、邪魔をしたくなかったのだ。
 それで、声をかけなかったのだ。
   
 彼女はお姑さんはもう85歳だという。
 私も、「私の母も今年で84歳になります。この月の上旬に骨折して今入院中なんです。でもトルコに来てしまいました。私の姉が面倒を見てくれています。だから問題はありません。80過ぎると老人には思ってもみないことが起きますから、おかあさんには気をつけてあげてください。
 それにしても、あなたのお母さんは毛糸のベストを着て、こんな暑い日なのに厚着ではないですか?!」
 彼女は答えた。「彼女は夏でもベストを着ているんですよ。毎日こんなです」
 カッパドキアの夏は、夜間は割と冷える。厚着をするのは伝統で、生活の知恵なのだ。
   
 彼女の4才ぐらいの息子は、母親の目を盗んで、パソコンの前に座ってコンピューターゲームを始めた。
 母親は息子に近づいて、日本語で言った。「だめじゃない! お母さんはこんな乱暴なゲームをして欲しくないの!」
 4才ぐらいの子供がコンピューターゲームが好きなのである。
 どこの国の子供でも、この情報化時代の快楽を享受している。
   
 紅茶を飲んだ後、私ひとりで旅行社の近くの土産物屋にでかけた。
 この店の小さな商品は大変安かった。
 (プラスチックのカッパドキアのキノコ岩や、キーホールダーがたった1リラだった。)
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   豆知識  東ローマ帝国とオスマン帝国
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   1.東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の誕生と滅亡
 ディオクレティアヌス帝の発案によるローマ帝国の東西の分割統治は東西の正帝、副帝の領土拡大を巡る闘争や帝位の継承をめぐる権謀術策で平和な時はなかった。
 ビザンティン(現在のイスタンブル)とは古代ローマが攻略したギリシアの植民都市の名前ビュザンティオンから来ている。現イタリアのローマを拠点とする皇帝マクセンティウスを倒し、東方皇帝リキニウスをビザンティンに追い詰めたコンスタンチヌス一世が最終的には分裂状態のローマ帝国を統一し、西暦395年にローマ帝国の首都として遷都し、コンスタンチノープルと呼ばれるようになった。統一されたのもつかのま、大帝の没後、三人の息子により再び分裂状態となる。そのため以後コンスタンチノープルを都とする東側は《東ローマ帝国》と呼ばれた。
 東ローマ帝国は7世紀にはイスラム帝国によって領土の大半を失う。また1204年には同じキリスト教徒の第4回十字軍によって首都コンスタンチノープルを蹂躙略奪され、ニカイアに亡命政権を樹立する。コンスタンチノープルに帰ったもののオスマン帝国軍により1453年コンスタンチノープルは陥落させられ東ローマ帝国は完全に滅亡した。東ローマ帝国の人々は自らをローマ人と呼んでいたが、7世紀以後は実のところギリシア語とラテン語を公用語とするキリスト教を信ずるギリシア系の人々の国家であった。そのためロシアではこれを《ギリシア帝国》と呼ぶ。
 《ビザンティン帝国》という呼称は19世紀以降の歴史学者によって用いられるようになった、おもに7世紀以後の《東ローマ帝国》の呼称である。日本では《中世ローマ帝国》と呼ぶことが提唱されている。
 
   2.オスマン帝国の成立と滅亡
 私たち日本人にはオスマントルコとしてなじみが深い。オスマン帝国は、ルーム=セルジューク朝(いわゆるセルジュークトルコ)の衰退に乗じて1299年にオスマン一世が小アジアに建国した時を成立時期としている。オスマン帝国時代、人々は自らをオスマントルコ人と称していた。
 1453年メフメト二世がビザンティン帝国の首都コンスタンチノープルを陥落させイスタンブルと名前を改めた。以後周辺国を占領、影響を及ぼし、ついに皇帝はイスラム教の指導者カリフをも兼務する事となり、政治上宗教上の最高指導者となった。
 16世紀の全盛期には西アジア、東ヨーロッパ、北アフリカの三大陸に及ぶ広大な国土を有した。しかしながら17世紀にはロシア、オーストリア、フランス、イギリス、イタリアに押され、国内では非トルコ系民族の独立意識が高まり次第に衰退していった。
 オスマン帝国は第一次世界大戦で敗北を喫したものの、侵攻してきたギリシャ軍をケマル=パシャが押し返すなどして戦果を上げ、国民的支持を受けて1922年トルコ革命を指導して成功させ、ここにオスマン帝国は滅亡してトルコ共和国が成立した。

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