今日のトレッキングはここから下流3.8キロの地点までだった。
 坂道を下っていくと私たちは一本の橋に出た。
 谷底は木陰で比較的涼しいとはいえ、私は少し疲れていた。
 私を除いて他の人は皆渡り終えてしまっていた。
 私が彼らの所に追いつくと、ガイドはちょっと心配して私を見た。
 そこで私は言った。「彼らは若いようですね。元気がある」
 軍曹は言った。「彼らはみんな学生ですよ」
 「そうなんですか?」と私は答えた。
   
 この時私は意識して私たちグループの観光客を眺めた。確かに彼らは大学生のように見える。
 そこで私は自分が歩くのが遅い原因について述べた。
 「あなた知ってるかしら? 私がここでは一番年寄りなんですよ。私が何歳か当ててみて!」
 軍曹は答えた。
 「Masako may be 18 or 19. (マサコはたぶん18か19かな?)
 軍曹はひと言そう言うと、ほかのカップルの方を見た。
 男の方はイスラム教国の黒い髪の人で、女の方はヨーロッパの金髪の若い美女だった。
 軍曹は私の年齢の話に同意を求めたのであろう。
 しかしカップルの二人は私をちらりと見るなり無視した。
 彼らは反対だと意見表明するために、くるりと背を向けてしまった。
 子供もいるし、18才というのはお世辞も過ぎるが、軍曹の女性に対する優しさが分かった。私はそれがちっとも嫌ではなかった。
 私は軍曹に話した。
 「私はここでは一番の年寄りだけれどもね、心臓も肺も問題はないですよ。ただ筋力が弱いだけ」
   
 私たちはIhlara(ウフララ渓谷)のウォークを開始した。
 両岸の屹立した絶壁に挟まれ、右側の小川に沿って、人が踏み固めてできた小道を一列で進んでいった。
 絶壁と小川の間は、あるところでは小さな林で、あるところは立ち枯れた草地だった。
 絶壁の表面からは崩壊した大きな岩があちらこちらに崩れ落ちていた。
 私は列の最後尾で写真を撮りながら進んだ。
 息子は軍曹といっしょに軽快に歩いて行く。
 若い人は若い人と一緒なのが好きなのだ。
 息子は私に関心を払わない。
 私の方は写真を撮るのに夢中になった。

渓谷トレッキングの始まりだ。両岸の絶壁は浸食されて峻険な岩山になったり再び延々と続く崖になったり変化が激しく見飽きることがない。

右岸の絶壁を回り込むように小川は流れ、
我々は小川の左岸にそって歩いて行く。

川に落ち込んでいる大岩の間を縫うようにして進む。人の手が入った樹木。

崖に続く斜面に散見される
丈が一メートル近い黄色い花。

樹木の影の比較的湿り気のある草むらに
けなげに咲く小さな花ばな。

散見される黄色い花。

夏の暑さにも耐えて枯れ残ったピンクの花。

崖途中の潅木初夏が盛りのひなげし。
一輪遅れて咲いた花。

これは日本のツリガネソウに似ている。
花の形や紫の特徴が。

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