洞窟の中には階段がなく、まるで蟻の穴のように小さな部屋が次々に連なっている。
 私たちは気がつかぬ間に、一歩一歩下に向かって進んでいるのだ。ガイドは教えてくれた、私たちは地下6層目にたどり着いたと。
 この地下都市は7層あり、深度は85メートルある。
   
 一つの部屋からもう一つの部屋へ移動するのはむずかしかった。というのは、あるところでは、大変狭いトンネルを通り抜けねばならず、それも、腰をかがめて一人がやっとのことで通れる大きさで、先の部屋まで、どれだけの長さ続くかもわからない。
 もしも一人で、こんなに狭く真っ暗な洞窟に入ったなら、きっとパニックに陥ってしまうだろう。誰にでも程度の差こそあれ閉所が怖いという気持ちはあるものだ。
   
 あるとき、ガイドが先頭に立って、トンネルの中に一列縦隊で入っていった。トンネル内には電灯がない。
 私は行列の中間あたりにいた。
 私たちは腰をかがめ進むのがつらかった。頭を上げることもできないし、両手を広げる幅もないのだ。
 と突然、私の前を進む人が止まった。1秒、2秒、3秒たった。
 私たちは前にも進めず、かといって戻ることもできない。
 腰は痛くなるし、空気も良くない。
 私はすごく心配になった。私の後ろの人もきっと不安に思っているに違いない。
 そこで、私は英語で、「The head of line is stopping. (隊列の前が止まっています。) 」
 私の後ろの方から男の人の声が伝わってきた、「 OK ! 」
 彼は後ろの人に現在の状況を伝えたようだった。
 その後、1秒、2秒、3秒が過ぎた頃、私の前の人が進み始めた。そこで私は、叫んだ。
 「 The line started moving ! (隊列が動き出しました!)」
 その後で、OKの声が聞こえた。私はすごく嬉しくて、まるで彼らの友達になったような気持ちがした。彼らの信頼を得られたと思った。
   
 下へ降りていくトンネルの入り口の奥の側の壁に立てかけるように、一枚の大きな石の円盤があった。
 円盤は人の背丈より高く、厚みは40センチメートルぐらいあり、力持ちの男性がやっとのことで転がして動かせるようなものだった。
 この地下都市には5千名ものキリスト教徒が住むことができ、もしも外敵が侵入した場合には住民たちはこの石盤を使ってトンネルを封鎖したのである。
 私たちのガイドは冗談で、どっこいしょー、どっこいしょーとかけ声を上げながら石盤を力一杯押して出口を閉ざすふりをした。
 このガイドの様子を見ていた、ガイドの冗談の意図を理解した女性が、哀願した。
 「止めて止めて! もしも出口が閉まったら、私たち一生、お天道様を拝めなくなるわ」
 私たちはいっしょになって笑い出した。
 よその国の人と共に冗談を言って笑い合うというのはなんと愉快なのだろう!

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