白いミニバスが着いたところには、一軒の平屋の店と、何の装飾もない長方体のコンクリートの建物があった。
 建物は白い柵で囲まれていた。
 私たちがガイドについて歩くと、柵の傍らにこの地方の農民らしい人たちがいるのに気がついた。
 年寄りの女の人は頭にスカーフをかぶっているし、男の人の方も年をとっていて円柱型のイスラム帽をかぶっている。
 私には彼らがどうしてこんな暑い屋外に立っているのかわからなかった。彼らは日差しを遮る傘も持っていないのだ。
 私たちが入っていった場所の商人たちは、用意周到に自分達の日よけにパラソルスタンドを立てている。
   
 私たちはガイドが入場券を買ってくるのを待った。
 この時、私は思い違いをしていたのに気づいた。これからトレッキングに行くのかと思っていたが、一行(いっこう)は立方体の建物の中に入っていくのだ。
 内部には階段があった。私たちは下り始めた。ようやく、私は目的地が地下都市であるのに気づいた。
 下っていく地下一層の壁はレンガか切り出した石のブロックだ。
 しかし、いつの間にか、壁は自然の凝灰岩をくりぬいた物に変わっていた。洞窟の天井の一番高いところでもさほど高くはない。背の高い人は頭をぶつけないように気をつけなければならない。
 内部は暗く、数カ所に電灯が灯ってはいるが、私たちは互いに見ることもできず自分の体も分からない。
 ガイドの声が良く通る声なので、私たちはガイドの声にしたがって進んでいった。
 私たちのツアーに参加している人はみんなTシャツを着てショートパンツを穿いた男子大学生や、Tシャツ、あるいはタンクトップを着て、ショートパンツを穿いた女子大生だ。
 二組のカップルと二人の男性と一人の女性のグループで、そのほかに私と息子。あわせて9人とガイドだ。そんなに大人数ではない。
 だから、こんな暗い所の観光でも迷子にならずに助かった。
 洞窟の中には私たち小グループ以外にも何人かのグループがいて、比較的混んでいた。私はこんな狭い空間にリュックなんか背負ってくるんじゃなかったと思った。
   
 ガイドは一カ所一カ所の岩壁の窪みの説明をした。
 「これは食糧倉庫。これは葡萄酒の発酵桶です」 
 突然ガイドが私を呼んで、ミネラルウォーターを貸してくれと言う。そこでペットボトルを貸した。
 ガイドはミネラルウォーターのフタを取って言った。
 「みなさん、聞いて下さいね。私が水を垂らしますので、しずくが引き起こす音を」
 ガイドは大さじ一杯ぐらいの水を落とした。
 私たちは落ちていった水が地下の井戸水に当たって帰ってくる音を待った。
 3秒ぐらい後に水滴が水のたまった縦坑の底に当たったバシャンという音を聞いた。
 あんな小さな水滴が引き起こしたのは、思いもかけない大きな反響音だった。これが直径1メートル、正確には分からないが、深さ20メートルの縦井戸の反応なのだった。

頭をぶたないように気をつけて

ほらぶつけたよ。だいじょうぶ?

不定形の部屋が、これも不規則に連なっている。

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