私たちはホテルの最上階のベランダで、愉快な時間を過ごしたあとで1階に戻った。
 2階の屋外レストランには人影はない。しかし、レストランの階下の室内に人がいるのに気づいた。
 そこで私はドアの外から屋内の人に尋ねた。
 「Is breakfast ready ? (朝ご飯の準備できましたか?)」
 「No,‥‥‥」彼は昨日の夜、私たちをレストランに連れて行ってくれた小学生だ。
 彼はたぶんトルコ語で答えたのだろう。
 私には意味が分からなかった。しかし、私は彼の話した中でひとつの言葉が聞き取れた。
 それは〈Quete〉だった。〈Quete〉の発音はまるでイタリア語の〈quattordici (四分の一)、quarto (四)〉あるいは英語の〈quarter (四分の一)に似ていた。
 そこで私はきいた、「7:15? (seven fifteen ?)」
 彼の答えは「Yes 」だった。たまたまだろうが推測が当たった。
  
 部屋に帰ると息子に言った。
 「朝ご飯はたぶん7時15分に始まるよ」
 私たちはのんびりと朝ご飯が始まるのを待った。あの小学生は一人で屋外階段を上がったり下りたり朝食の準備を進めている。その子の家族に対する貢献は立派だと思った。
  
 7時15分になって、階段を昇ろうとしたところで、偶然その小学生に出くわしたので、財布から5リラを出してあげようかと思った。
 しかし彼はお札を受け取ろうとしない。そして困ったような表情を見せた。
 そこにこのホテルの青年従業員(たぶんその子のお兄さん)がやって来てどうしてその子にお金をくれるのかと私にたずねた。
 私は困ってしまったが、すぐに彼が昨日の晩、私たちにしてくれたサービスを思い出した。3リラでは少ないと思っていた。
 そこで、私は、「Last night ,He took us to a good restaurant. (昨夜、彼は私たちをおいしいレストランに案内してくれたから。)」と言った。
 お兄さんは弟に私の言ったことを通訳した。
  
 私は、「Thank you !」と言ってお金を差し出した。
 彼はお金を受け取りはしたが微笑むだけで話さなかった。
 私は心中、トルコでは理由もないのにチップを渡してはいけないのだと思った。わたしはすこし背筋が寒かった。
  
 私たちが階段を上がると中年男性(たぶんオーナー)が忙しそうに従業員に指図してバイキングのテーブルを準備させていた。
 屋外レストランには数個のテーブル置かれていたが、まだ日傘が広げられていない。
 その中の一つのテーブルに座っているのは私に気球の撮影を勧めた日本人男性だった。
 私たちがテーブルを決めて、私一人で座っていると、アジア系の若い女性がパンのかごを持ってその男性のそばにやって来た。彼らはたぶん夫婦なのだろう。
 かごの中には二つ三つのパンしか入っていなかった。
 レストランの客はその夫婦と私たちしかいなかった。
 その時、息子が戻ってきて言った。「パンもないし、テーブルの上には食べ物がないよ」
 つい先ほど日本人女性がパンの入ったかごを持っているのを見たばかりだ。だから私は立ち上がってバイキングのテーブルを見に行った。
 テーブルの上には飲み物・ティーバッグ・バター・ジャムなどがあるが、パンやケーキやヌードルなどの小麦食品がないのだ。
 先客が食べ尽くしたのか、まだ出されていないのか。

 

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