気温がどれほど高いかはわからないが、日の光は情け容赦もなくミニバスの中に入ってくる。
 ミニバスは、建て物もない乾いた荒れ地と妙な形をした岩石の大地を走った。バスが最初に止まったところで私たちはガイドと一緒に下車した。しかし2回目に停車したときには、外があんまり暑いので、私と息子はバスを降りなかった。
 他の観光客はみな降りた。
 ガイドは車外で手招きして私たちに降りてくるように呼んだ。
 が、私は頭を横に振って行きたくないことを示した。
 ガイドは「おいおい、冗談でしょ?」と笑顔で私の顔を見た。
 私はまた首を横に振って、ホントに行きたくないんだと気持ちを伝えた。
 息子もすごく疲れているようで、降りようとしなかった。
  
 トルコの観光バスは停車中に空調を止めてしまう。このとき私と息子は我慢して座席に座っていた。
 バスの中がこんなに暑いんだったら、降りた方がいいとすら思った。
 私は彼らの戻ってくるのを待ち、車外で何をしているか見ていた。
 彼らは崖の上に立ってガイドを囲んでいる。
 ガイドは何かを2、3分説明している。
 しかし私には彼らが崖の上からどんな風景を眺めることができたのかが分からない。
 車を降りなかったが、その他の場所で車内からラクダの形の岩や、巨大な頭を持ったひな鳥の岩、その他の奇妙な形の岩が見えるには見えた。
 帰国してから、自ら、きれいな風景を見る機会を逃してしまったのかなとちょっと残念に思った。
  
 ミニバスはとうとう旅行社に戻り着いた。
 旅行者の前でガイドは他の観光客と一人一人握手した。
 とうとう私たちの所に来た。私は彼女と握手した。
 彼女は、「Nice to meet you !」と言った。この英語は初対面に用いるフレーズだ。(この時私はそう思っていた)
 私はなんと言ったら良いのか迷ってしまった。
 彼女は微笑みながらもう一回「Nice to meet you !」と言った。
  
 例の黒髪の男性や、ベルギー人の夫婦が私の反応を見つめている。礼儀を知らない日本人めと思っているのかもしれなかった。
 この時困ったことに、旅行社の社長らしきトルコ人の中年男性がじいーっと私たちの会話の様子を見ていたのである。
 たぶん彼は観光客のガイドに対する評価を知りたいと思っているらしい。
 彼女は困ったという顔をした。
 私はとうとう、「Thank you very much !」と言った。
 彼女はこれで完全に任務を全うしたのだと言うように、安堵の息をついた。
 もしも私が「Nice to meet you 」と返事をするのが正しいかどうかに固執しなかったら、彼女にばつの悪い思いをさせることもなかった。
 私には彼女の言いたいことが分かっていたのだから。
 彼女は私たちといっしょにカッパドキアの観光ができて良かったと言いたかったのだ。
  
 今、私は初対面の人と別れるときには次のように言うのが正しいと知っている。 「Nice to have met you !」(お目にかかれて良かったです。)
 もしも彼女に教えてあげられたら良いのに。
 が、アメリカ映画の中の人物が別れるときに、「Nice to meet you ! 」と言っているのも知った。ホントの所、正確な表現は何というのだろう?

 

一般的な風景

見おろしたら何が見えたのだろう

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