私たちはラクダ(?)を見たあとでバスに乗り、野外博物館GÖREMEにむかった。
 ここは9世紀のキリスト教徒がイスラム教徒の迫害を逃れて辺鄙(へんぴ)な巨石の谷に洞窟を掘ったところである。
 住宅や教会や修道院が造られた。
 小さな谷の周囲には4百以上もの教会がある。そのなかの30ほどが公開されている。
  
 トルコ人の若い女性ガイドは私たちを一つ一つの洞窟教会に連れて行って解説した。
 私と息子は日傘を差していた。
 しかし、他の観光客は日傘どころか帽子すらかぶっていない。
 私たちは緩やかな坂を登ってある教会に入った。洞窟の天井にはキリスト教の壁画があった。
 ガイドが英語で説明するときには、息子のために私が通訳してやった。ガイドの説明のほとんどがキリスト教徒の教会壁画の内容だった。
 例えば、馬に乗った男性はだれなのかとか、どうしてこのキリストは両性具有なのかとか。壁画は鮮明だった。
  
 私たちが歩いていると、前の方にいた先ほど自己紹介に反対した金髪の婦人が、気が変わったのか私に、自分達はベルギーから来たのよと言った。
  
 一つの教会を出たあとで、20メーターも歩くと、また次の教会に入るを繰り返し、7、8個の洞窟教会を見て回った。
 私たちは巨大な岩山の北側で、皆で少し休憩をとった。
 太陽は強烈で大変暑かったが、この時涼風が吹いてきたので、それまで口を閉ざしていた人たちがおしゃべりを始めた。
 私が息子のためにしていた通訳は下手くそだったが、私たちを見ていた人は私の英語の水準が高いと思ったのだろう。
 また黒髪で長ズボンを穿いた60才ぐらいの男性が私に好感を持ってくれたらしく、トルコ人の女性ガイドが、私に言った。
 「彼は、You are very cute !だと言っています。 彼はあなたの職業が何かと聞いています」
 このようなほめ言葉は普通、若い女の子に対して使われるものなので、私はうれしくなった。
 「私は普通の主婦なんです。でも若い頃アメリカの製薬会社*RIS*OLで12年間働いていました」と答えた。
 ガイドは男性の方を振り返って、「Do you know *RIS*OL ?」と言った。ガイドは*RIS*OLを知らないようだった。
 彼は私の言葉を理解できたようだった。
 ガイドは私に、「彼はあなたの言ったことが分かったそうよ」
  
 その会社はもともとアメリカの歯磨き粉の会社で現在は国際的な製薬会社になっている。だから大概の欧米人はみんな知っている。
 付け加えて言うならば、私は日本の工場で働いていたのであって、アメリカ本国ではない。
 この話で面白かったのは、英語の苦手な息子にも私たちの会話の意味が分かったことだ。
 息子はびっくりした、びっくりしたと言った。
 私を呼ぶときいつも「ばあさん!」と言っていたが、私に対する評価を改めてくれるかもしれない。

 

ギョレメ野外博物館

ギョレメ野外博物館周辺

同じく住居のうがたれた岩山

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